CCBJニュースレター

在日ブラジル商工会議所は、毎月会員の皆様あてにニュースレターをお届けしております。6月号では、日本国際協力センター(JICE)が実施する定住外国人への取り組みなどについてご寄稿いただきました。

 

タイトル:「日本国際協力センター(JICE)における定住外国人への取り組み」

一般財団法人日本国際協力センター(JICE)は日本国外務省と独立行政法人国際協力機構(JICA)が実施する開発途上国への国際協力事業(ODA)に、民間機能を発揮して協力することを目的に1977年に設立されました。2013年4月、一般財団法人への移行を機に「我が国と諸外国との互恵関係の強化に資する事業を通じて、国際社会の発展に寄与すること」を組織の目的として定めました。

「知をつなぐ。未来をつなぐ。世界をつなぐ」をキャッチフレーズに、現在は開発途上国のみならず、国際社会全体を対象として、日本の中央・地方政府(官公庁)や外国政府、国際機関、公益団体、民間企業などから受託する「留学生受入支援」「国際研修」「国際交流」「多文化共生」「日本語教育」などの様々な人材育成事業に取り組んでおり、これらの事業を通じた国際社会の課題解決を担う人材の育成、そして人材育成を通じた持続可能な開発目標(SDGs)への貢献を主眼に置いています。

定住外国人に向けた支援事業

JICEではこれまで日本に定住する外国人、取り分け日系人を対象にした多文化共生事業を実施してきました。その一つが2009年度から6年にわたり実施した「日系人就労準備研修」です。2008年のリーマンショックに端を発した金融危機では、日系人を始めとした多くの外国人の解雇や雇止めが相次ぎました。そのような日系人への再就職を支援するため、緊急雇用対策として厚生労働省が開始した事業をJICEが受託・運営し、2014年度までに約2万7千人の受講者を受け入れました。

その後、対象者を日系人から定住外国人へと拡充した「外国人就労・定着支援研修」を2015年度から2016年度及び2018年度から現在まで受託し実施・運営しています。

「外国人就労・定着支援研修」の特徴は、単なる日本語能力向上を目指すのではなく、職場における日本語コミュニケーション能力の向上や、ビジネスマナー、雇用慣行、労働保険、社会保険制度等に関する知識の習得を目指している点です。会話や読み書きの練習だけでなく、キャリアプランニングや職場見学、社会保険労務士による就労講義、ハローワーク訪問などを実施し、安定就労につなげます。対象者は安定就労への意欲の高い、身分に基づく在留資格(永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者)の外国人で、初めて日本語を勉強する人から受講することができます。2020年度については24都府県110地域にて、220コースの研修を実施しました。2020年度は新型コロナウイルス感染症の蔓延により、一部の地域でオンラインでの研修を行いました。

図1 レベル一覧(2020年度)

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表1 実施コース割合 (2020年度) ※レベル名,コース数,割合

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写真1 オンライン講義の様子

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写真2 職場見学の様子

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写真3 修了時の様子

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2009年度から始まった「日系人就労準備研修」から、2020年度の「外国人就労・定着支援研修」まで、JICEでは4万7千人以上の受講者を受入れ、そのうちブラジル人参加者は全体の40%以上、約19,500人に上ります。特に愛知県の三河地域や、岐阜、三重等の受講者の多くがブラジル出身です。

表2 受講者出身国・地域割合(2009年度~2020年度)

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外国人を受け入れる側への支援事業

またJICEは定住外国人だけでなく、外国人を受け入れる日本側の企業・組織への支援事業にも取り組んでいます。例えば、JICE中部支所では2019年度に、愛知県多文化共生推進室より委託を受けて、「新たに来日した外国人就労者に対する早期適応研修カリキュラム」及び教材(やさしい日本語+7言語)、動画教材、指導者向けマニュアルを作成しました。これは、外国人を受け入れる企業等が、新たに来日し愛知県で就労する外国人に対して、職業生活や社会生活をする上での支援を円滑に実施するためのサポートツールとして全国に先駆けて作成されたものです。

この研修カリキュラムと教材等を企業等に効果的に活用してもらうため、2020年1月末~2月上旬には愛知県主催で県内での説明会が開催されました。説明会に参加した技能実習生の受け入れを支援する監理団体や企業、登録支援機関等に対し、JICEは「外国人従業員を円滑に受け入れるためには、外国人自身が日本の生活ルールやマナーをできるだけ早く学ぶことはもちろん、受け入れ側も彼らの固有の文化や考え方に興味を持ち、双方が歩み寄ることが大切である」ということを強調しました。また、企業が外国人を雇用することになった経緯を社内全体で把握し、自社には外国人社員が必要であるという共通認識を持つことの重要性など、受け入れ側の心構えについても説明しました。

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写真4 教材                   写真5 マニュアル

その他、定住外国人との交流事業

JICEでは上記の他、外務省より受託する国際交流事業「Juntos!!中南米対日理解促進交流プログラム」において、ブラジルを含む中南地域からの短期招へい者を受け入れており、定住外国人との交流プログラムを実施してきました。2015年度には群馬県邑楽郡大泉町のブラジル人コミュニティーや小学校、2016年には浜松の在浜松ブラジル総領事館やブラジルコミュニティー、ブラジル人学校等を訪問し交流プログラムを実施しました。現在は新型コロナウイルス感染症の影響によりオンラインプログラムを実施しており、2021年4月13日(火)には名古屋在住の日系ブラジル人及び在名古屋ブラジル総領事館と繋いでのオンライン交流、2021年5月20日(木)には在日ブラジル商工会議所とのオンライン交流を行うなど、日本で活躍する日系人や定住外国人についての理解促進とネットワーク構築に寄与しています。

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写真6 大泉町訪問の様子          写真7 在日ブラジル商工会議所とのオンライン交流

わが国では、少子高齢化の進行による労働力人口の減少に伴い深刻な人手不足に陥っており、新たな人材確保の方策として外国人労働者に対するニーズが急速に高まっています。 人材育成のプロフェッショナルとして44年間培ってきたノウハウを生かし、JICEでは引き続き定住外国人と地域が、互いに理解し合い、共に生きる多文化共生社会の推進に向けた事業を行っていきます。

以上

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