CCBJニュースレター

(寄稿)
 
「わが国製造業企業の海外事業展開に関する調査報告」
――2022年度 海外直接投資アンケート調査結果(第34回)――
 
株式会社国際協力銀行 企画部門 調査部
塚本 遼
 
株式会社国際協力銀行(JBIC)は、「わが国製造業企業の海外事業展開に関する調査報告」を発表した。今年度調査では20227月に調査票を発送し、9月にかけて回収した。(対象企業数946社、有効回答数531社、有効回答率56.1%)。ご協力いただいた企業の方々には改めて感謝したい
 
回答企業のうち、ブラジルに生産拠点を保有している企業は50で、業種別にみると自動車(12社)、化学(12社)、電機・電子(5社)が多い。また、販売拠点を保有している企業は59あり、業種別では一般機械(13社)と電機・電子(10社)が多い。なお、中国やASEAN諸国と異なり、販売拠点数が生産拠点数よりも多いのはブラジルの特徴といえる。
 
 回答企業に中期的な有望事業展開先国・地域を5か国あげてもらい、ランキングにしたところ、図表1のとおりとなった。
(図表1:中期的な有望事業展開先国・地域)
 
今年度の集計では中国とインドが首位を入れ替わり、インドが得票率を2.3ポイント増加させて2019年以来3年ぶりの1位に返り咲いた。他方、中国は得票率で-9.9ポイントと大幅に下落し、2位に転落した。新型コロナの大流行から経済活動が回復し、今後の市場の成長性に高い期待が集まるインドに対して、中国は、厳格なゼロコロナ政策等を主因とする景気悪化や米中対立の激化の影響もあり、得票率を大きく落としたものとみられる。
 
米国は引き続き回答企業からの根強い支持を受けて3位を維持した米国は成熟した先進国でありながらも巨大な市場とその成長性に対する期待が高く、2019年以降着実に得票数を増加させている一方で、急激なインフレーションに伴い、課題として労働コストの上昇を挙げる企業が今年度急増しており、今後の行方が注目される。
 
ブラジルについては13位という結果になり、昨年度から順位は横ばいであった(得票率:4.1% / 昨年度比 +0.3ポイント)。ブラジルを有望視する理由としては、「現地マーケットの今後の成長性」(86.7%)が最も高く、次いで「現地マーケットの現状規模」(53.3%が続いていることから、市場の高いポテンシャルに根強い期待感が寄せられていることが伺える(図表2)。また課題としては「法制の運用が不透明」(46.7%)が最多となったほか、「税制システムが複雑」(40.0%)「税制の運用が不透明」(40.0%といった回答が得票を伸ばしており、制度面での課題が浮き彫りになる結果となった(図表3)。
(図表2:ブラジルの有望理由の推移)
(図表3:ブラジルの課題の推移)
 
ガバナンス面での課題が依然として残る一方、新型コロナに伴う経済停滞からは徐々に回復の兆しが見えてきており、ブラジルもその例外ではない。加えて、課題とみられた税制面についても、連邦議会において改革の必要性が次第に認識されつつあるようである。ブラジル市場の高い潜在力を引き出していくために、原材料・部品調達や人件費のコスト増も新たな問題として浮かび上がっている中、具体的な政策が施されていくことを期待したい。
 
2022年度「わが国製造業企業の海外事業展開に関する調査報告」全文はリンクからご覧いただけます。→ https://www.jbic.go.jp/ja/information/press/press-2022/1216-017128.html
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